認知症看護認定看護師とは
戦後のベビーブーム世代が2015年に高齢期を迎え、2025年には高齢者人口がピークの3500万人に達する日本において、認知症者のケアは深刻な問題になっています。 病の特性として合併症を含む病態・病状管理の頻度も高くなるため、看護者の果たす役割は大きいです。 そこで質の高い認知症看護を実践する看護者の育成を行うべく、老年看護学会が日本看護協会に認定看護師分野として「認知症看護」を申請し、2004年11月に特定を受けました。 現在は200名近くの認定看護師が各々の施設で活動し、認知症看護の質の向上に貢献しています。
認知症看護認定看護師に求められる能力
◆認知症者の権利擁護
認知症看護認定看護師には、認知症者を擁護し、認知症者ができないと判断された場合は自分がその代弁者となって、認知症者の思いや意思を表現するアドボカシーの発揮が求められます。
◆行動障害の予防・緩和
認知症では中核症状の認知機能障害に加えて、さまざまなBPSD(認知症の行動・心理症状)が見られることが多く、これは本人や介護者のQOLを低下させる大きな要因となります。
認知症看護認定看護師はいかなるBPSDかを特定し、症状を悪化させる要因・誘因にはたらきかけ、行動障害の予防・緩和に努めなければなりません。
また、幅広い対応をチームで考えていくために、BPSDの学習会や事例検討会を率先して開催することも必要です。
◆総合的アセスメントと各期に対応したケアの実践
看護計画を立案するには、認知症者の状況・環境を全体的に観察し、他の疾患や加齢変化の影響を総合的にアセスメントしなければなりません。
また、認知症の進行にともなった臨床症状と、その結果として生じる認知症者の日常生活行動の変化の過程について、できるだけ詳細に観察し理解しておく必要があります。
このような進行過程をふまえて看護目標を設定し、具体的看護ケアを策定する能力が求められます。
◆生活・療養環境づくり
認知症者にとって良質な環境づくりを行うためには、いかに認知症者のニーズに沿った環境アセスメントが行えるかが重要な鍵となります。
認知症者が快適に暮らすことができない生活・療養環境にあるとしたら、さまざまな観点から良質な環境へと改善していくことが求められます。
そのために想像力と創造力をはたらかせて、エビデンスにもとづいた計画的かつ意図的な環境づくりを実践できる能力が求められます。
◆治療的援助を含む健康管理を行い、ケアする場の環境を整えていく
高齢者は複数の疾病をもっている場合が多く、薬物の副作用、脱水、電解質異常、低栄養なども起こりやすく、病態の変化がわずかで症状も典型的でないことから以上の発見がしにくいものです。
このような特徴に加えて認知症者は身体的な苦痛を適切に表現することが難しいため、BPSDとして表現している場合があります。
そのため、わずかな変化も見逃さない緻密な観察力が求められます。
また、転倒や誤飲などの危険性を配慮し、全身状態および生活の変化につねに関心をもち、安全管理、健康管理を行っていく事も重要です。
認知症看護認定看護師になるには
認知症看護認定看護師の実務研修における看護実績と教育課程入学時の勤務条件は以下の通りです。
1 | 通算3年以上、認知症患者の多い医療・福祉施設(在宅ケア領域を含む)等での看護実績を有すること。 |
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2 | 認知症患者の看護を5例以上担当した実績を有すること。 |
3 | 現在、認知症患者の多い医療・福祉施設(在宅ケア領域を含む)等で勤務していることが望ましい。 |