認定看護師分野について
認定看護分野とは、高度化及び専門分化する保健、医療及び福祉の現場において、熟練した看護技術及び知識を必要とする看護分野として制度委員会が認めたものをいいます。認定看護分野の特定の方法は、制度委員会が同委員会に申請された分野について、看護の現状と将来の展望に応じて逐次審議し、理事会の議決を経て行うものとされています。下記は認定看護分野特定条件です。
1 | 看護実践経験の積み重ねのみでは修得しがたい、特定の知識及び技術を必要とすること。 |
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2 | 他の分野との重なりがあったとしても、独自の看護知識及び技術を必要とすること。 |
3 | 何らかの法的支援及び経済的支援があるか、または将来それが期待されること。 |
下記は2012年1月時点で特定されている分野一覧です。
認定看護分野 | 知識と技術 |
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救急看護 | 救急病態を理解した患者対応(救命技術・トリアージ・病態に応じたケア技術) |
危機状況にある患者・家族の支援(早期から対象に応じた危機介入、支援) | |
皮膚・排泄ケア | ストーマ造設・褥瘡等の創傷及び失禁に伴い生じる問題のアセスメント及び適切な皮膚ケア |
排泄障害の病態理解及び個人に適した排泄管理、指導(オストミー・失禁ケア) | |
集中ケア | 生命の危機状態にある患者の病態変化を予測し、重篤化を回避するための援助 |
生活者としての視点からのアセスメント及び早期回復支援リハビリテーションの立案・実施(呼吸理学療法、廃用予防等、種々のリハビリテーション) | |
緩和ケア | 徹底した苦痛症状の緩和(疼痛及び疾患に伴うその他の苦痛症状の緩和—リンパドレナージ、呼吸理学療法、口腔ケア等)及び療養の場に応じた患者・家族のQOLの向上 |
患者・家族のグリーフケア | |
がん化学療法看護 | がん化学療法薬の安全な取り扱いと適切な投与管理、副作用症状のマネジメント |
がん化学療法を受ける患者・家族のアセスメント及び、問題に対するマネジメント能力向上のための支援 | |
がん性疼痛看護 | がん性疼痛の全人的ペインアセスメントと症状マネジメント |
薬物療法の適切な使用と管理及びその効果の評価 | |
訪問看護 | 主体性を尊重したセルフケア能力の向上のためのケースマネジメント |
看護技術・知識の提供及び管理・指導 | |
在宅ケアチームの形成とマネジメント | |
感染管理 | 疫学の知識に基づく院内感染サーベイランスの実践 |
ケア改善にむけた感染防止技術の導入(サーベイランスに基づく感染対策) | |
各施設の状況にあわせた感染管理プログラムの立案と具体化 | |
糖尿病看護 | 血糖パターンマネジメント(血糖コントロール管理) |
フットケア(合併症予防) | |
ケアシステム立案(集団指導や地域ネットワークシステムにおけるチームアプローチの促進) | |
不妊症看護 | 生殖医療、遺伝学、リプロダクティブヘルスの知識に基づく不妊当事者へのケア計画の立案 |
治療に対するカウンセリング、教育及び自己決定への支援 | |
新生児集中ケア | 急性かつ重篤な状態にある新生児に対し、後障害を予防し母体外での身体的、生理学的安定を図るためのケア |
養育行動障害の防止のための親子関係形成の支援 | |
透析看護 | 末期腎不全患者に対し、専門的知識を用いた臨床判断に基づく個別的ケアと教育、及び自己決定の支援 |
安全かつ安楽な透析治療の管理 | |
手術看護 | 麻酔、手術侵襲による心身への影響を最小限にするための安全管理(異常の早期発見・迅速な対応、術式に応じた卓越した機械出し技術、体温・体位管理、手術機材・機器の適正な管理等) |
乳がん看護 | 乳がんの集学的治療及び治療に伴う副作用に対するケアとセルフケア確立に向けた指導 |
リンパ浮腫予防、症状緩和についての指導 | |
ボディイメージの変容に対する心理・社会的問題に対する支援 | |
摂食・嚥下障害看護 | 脳神経・筋骨格系フィジカルアセスメント及び摂食・嚥下機能評価法に基づいた、摂食・嚥下機能の評価 |
適切かつ安全な摂食・嚥下訓練の選択、実施 | |
小児救急看護 | 救急時の子どもの病態に応じたアセスメント及び症状マネジメント、救命処置技術 |
子どもの非言語的サインの理解及び適切な心理的ケアの実施 | |
育児不安や虐待への対応と子どもと親の権利擁護 | |
認知症看護 | 認知症患者の権利擁護として意思表出能力を補完 |
認知症の周辺症状を悪化させる要因への働きかけによる、行動障害の予防、緩和 | |
認知症患者の状態把握を含む、心身状態の総合的なアセスメント及びケアサポートシステムの立案 | |
脳卒中リハビリ看護 | 脳卒中患者の重篤化回避のためのモニタリングとケア |
急性期から病態に応じた活動性維持・促進のための早期リハビリテーション | |
脳卒中患者の急性期・回復期・維持期における生活再構築のための機能回復支援 | |
がん放射線療法看護 | がん放射線治療を受ける患者・家族のアセスメント及びセルフケア支援 |
がん放射線療法における安全・安楽な治療環境の提供 | |
がん放射線療法に伴う副作用の予防と症状緩和ケア | |
慢性呼吸器疾患看護 | COPDをはじめとする慢性呼吸器疾患患者を対象としたADL拡大を目指した呼吸リハビリテーション |
患者のセルフケア能力を高めるための指導・教育 | |
慢性心不全看護 | 慢性心不全患者を対象とした増悪因子の的確な評価・回復促進及び増悪の回避・予防 |
患者の生活調整を支援し、自己管理能力を高めるための指導・教育 |
認定看護師とは
認定看護師(Certified Nurse)とは、日本看護協会の認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて、水準の高い看護実践のできる看護師の事です。
認定看護師は、看護現場において下記の3つの役割を果たすことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることに貢献します。
実践 | 個人、家族及び集団に対して、熟練した看護技術を用いて水準の高い看護を実践する。 |
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指導 | 看護実践を通して看護職に対して指導を行う。 |
相談 | 看護職に対しコンサルテーションを行う。 |
また、認定看護師はレベル保持のため、認定後5年ごとに更新審査を行う事が義務付けられています。
例えば、看護師の資格を取得して病院に勤め始めると新卒研修などの総合的な研修を受ける事になります。それから配属先の病棟で最初は先輩看護師について実務を経験しながら、看護師としての能力を身につけていきます。
そして数年同じ病棟などで働くうちに「今以上に高度な知識を得て、患者さんやそのご家族の役に立ちたい」と思うようになったり、日々の多忙な業務で専門知識の習得が困難と感じたり、所属する病院の代表となって専門性を高めるよう指示を受けたりします。
このような場合に活用されるのが認定看護師制度です。
認定看護師の数は年々増加傾向にあり、これから先もよりいっそうの活躍がみられるでしょう。下記は参考までに認定看護師の年次推移を掲載しています。
年(西暦) | 認定看護師数 |
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1996 | 0人 |
1997 | 59人 |
1998 | 132人 |
1999 | 276人 |
2000 | 409人 |
2001 | 546人 |
2002 | 758人 |
2003 | 998人 |
2004 | 1,257人 |
2005 | 1,741人 |
2006 | 2,486人 |
2007 | 3,383人 |
2008 | 4,458人 |
2009 | 5,794人 |
2010 | 7,363人 |
2011 | 9,048人 |
認定看護師になるには
認定看護師になるには最低6か月の通学を必要としますので、職場を休んだり、通学可能な範囲内に教育機関が無い場合は宿泊も伴います。
こういった事情から職場の理解が必要ですので、近年では病院組織の完全バックアップのもと、各教育機関に派遣されるといったシステムも多くみられるようになりました。
認定証を受け取るまでの具体的な流れとしては下記をご覧ください。
(1)日本国の保健師、助産師及び看護師のいずれかの免許を有すること
(2)実務研修5年以上(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)
(3)認定看護師教育課程修了(6か月・615時間以上)
(4)認定審査(筆記試験)
(5)認定看護師認定証 交付・登録
なお、認定看護師になる為に通学する教育機関は看護協会によって定められており、
認定看護師の教育に相応しい条件を備えた教育機関を、認定看護分野の教育課程ごとに限定されています。
下記は2012年度に開講する認定看護師教育機関の一覧です。
分野別認定看護師一覧
- 救急看護
- 皮膚・排泄ケア
- 集中ケア
- 緩和ケア
- がん化学療法看護
- がん性疼痛看護
- 訪問看護
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 不妊症看護
- 新生児集中ケア
- 透析看護
- 手術看護
- 乳がん看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 小児救急看護
- 認知症看護
- 脳卒中リハビリ看護
- がん放射線療法看護
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